メディケアコラム

30代は肥満の入り口。プロの語る太りやすくなる原因とダイエット方法

30代に差し掛かると、徐々に増えてくる肥満。20代の頃は何を食べても同じ体重だったのに、唐突に太りやすくなった人も多いでしょう。アラサーから30代にかけては、体の仕組みが変わってくる時期です。
 
30代も後半になれば、その傾向はさらに加速。一度ついた頑固な脂肪は、なかなか落とせなくなります。このページでは、30代の男女が肥満になる原因から対処法、肥満外来での取り組みまで専門家の視点で解説します。
 

半数以上が肥満傾向というデータも。30代の肥満の現状

日本肥満学会の定める「BMI(ボディ・マス・インデックス)」。肥満外来では、この指標を使って肥満の度合いを測定します。18.5〜25なら標準体型、25〜30なら肥満1度、30〜40なら肥満2度、40以上なら肥満3度と診断され、BMIが上がるほど肥満もより深刻になります。
 
こうした肥満者がジワジワと増える世代が30代です。深刻なのは男性で、厚生労働省の発表した平成29年度の「国民健康・栄養調査」によると、30代の男性の32%は肥満者。実に3人に1人はBMI25以上という計算です。30代の女性の肥満者は14.2%にとどまっていますが、これも20代の5.7%と比べると急激に増えています。
 
FireShot Capture 001 -  - www.mhlw.go.jp.png(厚生労働省 2017年「国民健康・栄養調査」より引用)

また、別のデータを参照すると、30代の肥満傾向はより顕著です。たとえば、ドコモヘルスケアの調査によれば、30代の男性の52.4%、女性の41.4%は肥満。なんと半数前後の人が体型に課題を抱えているという結果で、30代が「肥満の入り口」になっていることが伺えます。
 
002.jpg(ドコモヘルスケアより引用) 
 

30代が肥満になる原因は?

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このように、30代に差し掛かると唐突に訪れる肥満の入り口。20代の頃と同じ生活をしていても太ってしまいますが、その原因は何なのでしょうか。人生の潮目の変わる30代では、ダイエットを引き起こす因子があらゆる場面に潜んでいます。
 

・美容・健康に対する意識の低下

まず、30代の肥満の背景にあるのは、美容・健康に対する意識を失いやすくなる年代であること。男性の仕事は多忙を極め、健康への意識を疎かにしがち。多少の無理も利くことから、つい雑な食事を食べることも増えてしまいます。女性にしても同様で、家事や子育てといった毎日に追われることになります。結婚によって、美容に対するモチベーションが下がる人もいるでしょう。
 
事実、30代の食生活は乱れがちで、厚生労働省の発表によると、主食・主菜・副菜の揃った食事を毎日食べている人の割合は、30代の男性が37.9%で最低。女性は42.2%ですが、これも20代の38.5%に次ぐ記録で決して高いとは言えません。
 
また、30代は運動不足も特に深刻です。国民の大半が運動不足なのが現状ですが、実は統計で見ると、年齢が上がるにつれて歩行の量は増えています。しかし、30代はどの年代よりも運動の時間を確保できておらず、せっかく体力はまだ残っているのに、使わないうちにどんどん衰えているのです。健康の曲がり角であると自覚し、食事や運動に配慮しないといけません。
 

・加齢による基礎代謝ダウン

30代の肥満の原因の一つは、20代の頃より筋肉量が落ちてくることです。中でも筋肉の約70%を占めると言われる、骨格筋の減少は見逃せません。血中の糖質の約70%は骨格筋へと届けられますが、その行き先が減ってしまうと、余剰分は脂肪として溜め込まれることに。20歳前後だと体重の約40%は筋肉ですが、30歳を超えるとガクッと落ち、10年で約10%ずつ減っていきます。
 
筋肉の量が減少すれば、体の基礎代謝も落ちていきます。基礎代謝とは、いわゆる「何もしなくても消費されるエネルギー」のこと。呼吸や内臓の活動、体温の維持など、生命を保つために使われるエネルギーを指しています。脳や肝臓での消費量も多いのですが、最もエネルギーを必要とするのが筋肉。その他、骨や皮膚の新陳代謝も衰えていくので、基礎代謝は全体的に落ちていきます。
 

・目まぐるしい日常へのストレス

30代はストレスの多い年代とも言えるでしょう。男性の場合、仕事では部下を抱えてチームをマネジメントする立場に変わり、家庭も持つタイミング。女性の場合、子育てに多くの時間を割くようになり、ママ友との人間関係や、旦那さんへの不満も生まれるかもしれません。
 
こうしたストレスは、肥満の大きな要因になります。健康を気遣う余裕はなくなり、一度太り始めたら歯止めが効かなくなってしまいます。何より問題なのは、ストレスによってストレスホルモン「コルチゾール」が増加し、脳から過食や偏食の指令が出ること。疲れている人ほど油物や市販のお弁当を口にしているというデータもあります。
 
いざダイエットに取り組んでも、ストレスに晒されていると思うように継続できません。すぐにリバウンドしてしまい、それに対するストレスでさらに食べてしまうという悪循環に陥ることも。ダイエットを成功させるには、きちんと脳を喜ばせることです。趣味ややりたいことに没頭したり、旅行やショッピングなどでリフレッシュしたりと、ストレス発散の矛先が食事へと向かないように日々を充実させることが大切になります。
 

・女性に多い「サルコペニア肥満」

30代になると、一見しただけではわからない「隠れ肥満」も増えてきます。その正体は「サルコペニア肥満」と呼ばれるタイプの肥満です。これは、肥満とサルコペニアを同時に発症した状態のこと。男性でも発症しますが、女性は特にこの症状にかかりやすいため、気をつけないといけません。
 
まず、サルコペニアとは、加齢とともに筋肉量が一気に減少する病気です。腕や脚の筋肉量が減ることで、握力や歩行速度といった些細な動作さえ満足にできなくなります。そこに肥満を併発すると、肥満で脂肪は増えているのに、サルコペニアで筋肉は減っている状態になります。外見のみならず、体重やBMIにも変化が見られないため、自覚症状を持てません。これは非常に危険です。
 
外見から気づきにくいということはすなわち、肥満の発見が遅れがちになるということ。水面下で生活習慣病などが進行しやすいのです。中でも気をつけたいのは糖尿病で、筋肉量の激減は基礎代謝の低下を引き起こすため、本来なら消費されるはずの糖質が余ってしまいます。筋肉が衰えた状態で糖尿病を患えば、寝たきりになるリスクも高いです。
 

認知症のリスクが大幅アップ。30代の肥満リスク

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では、30代の肥満にはどんなリスクが存在するのでしょうか。まだ若いと思っていると、意外な落とし穴にはまってしまうかもしれません。
 
まずは全世代を通じて気をつけたいことですが、糖尿病や高血圧、高脂血症といった生活習慣病です。これらの病気が怖いのは、自覚症状が少ないこと。多忙な毎日を過ごしている30代は、いつの間にか悪化しているケースも少なくありません。最悪の場合、心不全や脳卒中といった命を脅かす疾患にも繋がるので、健康診断などで少しでも異常が見られたら、きちんと病院にかかって生活習慣を見直しましょう。初期の段階なら、薬を使わずに治療できることも多いです。
 
これを放置しておくと、寿命にも影響を及ぼすことがわかっています。ハーバード公衆衛生大学院とケンブリッジ大学の合同で行った調査によれば、重度の肥満の人はそうでない人に比べて約10年も寿命が短くなることが発見されています。それだけでなく、高齢者より若者の方が肥満への死亡リスクが高いことも確認されました。30代の肥満は、寿命にも直結する危険性を秘めているのです。
 
また、肥満は脳の機能にも影響します。オックスフォード大学が発表した研究によると、30代で肥満だった人は、認知症を発症するリスクがそうでない人の3.5倍に跳ね上がるそうです。40代は1.7倍、50代は1.5倍だったので、30代の肥満がいかに高齢になった後の人生へと影を落とすかがわかるでしょう。
 

30代に必要なダイエットのコツと方法

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では、30代の肥満を改善するには、どういったアプローチが必要なのでしょうか。重要なのは、まずは美容や健康に対するモチベーションを取り戻すこと、そして日々の多忙さとの折り合いをつけることです。ここでは30代のダイエットのコツと方法を紹介します。
 

・ダイエットの目標を可視化する

美容・健康を気遣っている余裕のなくなる30代。多忙な毎日を受け身に過ごしていると、ダイエットの機会は見つからず、肥満はどんどん悪化します。重度の肥満に陥ったり、生活習慣病で体を壊したりする前に、自分の生活を改めないといけません。
 
まずは、ダイエットの目標を可視化しましょう。ぼんやりと「痩せなきゃ」と思っていても、多忙な日々を送っているうちに忘れてしまいます。「ダイエットに成功したらこの服を着たい」「こんな場所に行きたい」など、具体的な動機を設定するのも有効です。
 
ただし、結果を急ぐあまり、無理な目標を立てることだけはやめてください。無理な目標を立てれば、無理な方法でダイエットをすることになります。過剰な糖質制限や「○○だけダイエット」のような方法は、心身ともに毒でしかありません。継続は困難になり、リバウンドの原因になるばかりか、食事を極端に減らすと体は危機に備え、脂肪を溜め込みやすくなります。
 

・現在の食事を引き継ぎつつ、食生活を改善する

基礎代謝の低下により、20代の頃とは比較にならないほど太りやすくなる30代。食生活の課題は体重へと直結するので、しっかりと改善しないと太る一方です。データによると、主食・主菜・副菜を満遍なく摂取している人はどの年代よりも少ないので、筋肉を維持するたんぱく質を中心に、さまざまな食材を摂ることを意識しましょう。可能であれば、肉と魚をバランスよく食べること。豆腐や納豆など、大豆タンパクを摂取するのもおすすめです。
 
とはいえ、目まぐるしい日々を送る30代の人にとって、食生活をガラリと改善するのは骨が折れます。張り切って変えようとすれば、忙しくなったときにダイエットを続けられなくなるリスクもあるでしょう。まずは、現状の食事に一品の野菜を加えたり、間食のおやつを果物に置き換えたりすることから始めてください。現在の生活を崩さなくても実行できるようにすることで、忙しさと上手に付き合いながら痩せていくことができるのです。
 

・早期改善を心がける

30代になると体力に陰りは見えますが、まだ現役の年代でもあります。基礎代謝は年齢を重ねるごとに落ちていき、40代や50代になるとさらに痩せにくくなるので、30代で肥満になったら早期改善を心がけましょう。つい「まだ大丈夫」と思ってしまうかもしれませんが、油断していると高血糖や高血圧、高脂血症の症状に襲われたり、体の節々を痛めたりする恐れもあります。
 
また、多忙な30代の皆さんは、外部の力に頼ってダイエットをするのも手。肥満外来への通院はもちろんのこと、ジムやヨガなど、肥満を改善するための環境を先に整えてしまうのも良いかもしれません。特に30代前半の人は気力・体力も旺盛で、若い感性をお持ちなので、こうした環境にも適応して楽しむことが可能でしょう。
 

肥満外来で大切にしている「無理をしないこと」

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さて、ここまで30代の肥満を解消する方法をお話ししてきましたが、何より大切なのは「無理をしないこと」です。過剰な食事制限をしたり、ジムに通って強度の高いトレーニングをしたりしても、かなりの確率で続きません。多忙な30代の皆さんに必要なのは、現在の生活に沿った形でダイエットに取り組むことです。
 
たとえば、いきなりランチをすべてお弁当にするのは難しい人も多いと思います。私たちはそんなとき、患者さまの勤務先の近くにある通いやすい飲食店の中から、よりダイエットに向いているメニューを探していきます。飲み会に行くのを避けられないなら、居酒屋でのメニューの選び方、食べすぎを防ぐコツなどを指導します。
 
「それで痩せるの?」と思われるかもしれませんが、多くの人はしっかりと痩せます。そもそも肥満は、生活習慣の問題点が積もりに積もって起こるもの。それを取り除いてあげれば、体は自ずと本来の状態に戻るのです。また、無理なダイエットはストレスになるため、むしろ食欲を増進させたり、リバウンドの原因になったりします。
 
ダイエットのコツは、簡単な取り組みを続けること。ハードルの高いことは避けて、時には好きなものもしっかりと食べて脳を喜ばせながら、コツコツと継続しましょう。とはいえ、痩せるかわからない中で「ストレスフリーな取り組み」を続けるのは、逆に勇気も必要なもの。そんなときは、無理なく痩せるノウハウに精通した、私たち専門家にご相談ください。あなたに合った方法で、自然とやせていく道筋を考えさせていただきます。
 



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