あなたは読書をしますか? 本を読むという行為は,実は心理療法のひとつとしても使われているのです。
物語を通して,目標に到達するために必要な筋道を洞察する・・・それが,読書療法です。今回は,スマートフォンから離れられないかたのためにも,「読書療法」についてお話ししましょう。
読書療法とは,カウンセリングの過程で,クライアントに特定の物語を読ませるものです。読書によって,クライアントは,書中に登場する人物に触れることになりますが,登場人物は自分の内面を開示し,様々な場面を通してそれを訴えかけてきます。クライアントは,そのようにして表現された登場人物の人間観・世界観を,いわば傍観者の立場で読むことができることになるのです。このことは,面接場面において,クライアントがしばしば感じる圧迫感や反発無しに,他者の内的世界を率直に受け入れることが出来るという読書療法の利点を示していると言えるでしょう。
読書療法は,一般に次のような効果が期待されるといわれています。
1.登場人物と自己を同一視し,その人物を批判的に語るときは,クライアント自身も自らの問題を洞察し,再適応への動機づけをもつ。
2.物語の中から,クライアント自身の問題解決に必要な情報を得られる。
3.作中で示される様々な場面における,登場人物のふるまいや感情表現を通じて,適応的な価値の判断基準を得る。
4.抑圧されている欲求の充足を,自らの物語の登場人物に投影することによって間接的に行なう。
以上のような効果が期待されるので,読書はつまらないという考えは捨てて,たくさんの本を手にとってみましょう。
クライアントの問題に応じて適書を選定し,必要に応じてどのような態度で読み進めるべきかを教えることがあります。読後はその作品について語り合ったり,場合によっては感想文を書いてもらったりすることもあります。この,いわば「振り返り」の過程を通して,クライアントは自己洞察にいたる手がかりを自らの手で確認していくことになります。読み物の選択にあたり,クライアントの問題に直接関係のある事柄を主題とした書物を選択するか否かは,それまでのカウンセリングの進捗状況やクライアントのパーソナリティなどの要因によって異なります。
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