人間の本能のひとつである「食欲」が上手くコントロールできなければ,その怖い結果として,「摂食障害」になってしまう恐れがあります。今回は,この摂食障害について,正しい知識を身につけていきましょう。
摂食障害とは,体型および体重と自己評価が結びついた若い女性に多い病気です。しかし,最近では,「若さだけ・女性だけ」といった概念が崩れてきています。そもそも,自発的に食行動異常をきたす病気です。
摂食障害には,神経性食欲不振症(神経性無食欲症)と,神経性過食症(神経性大食症)が含まれています。精神疾患マニュアルDSM-Ⅳの分類によりますと,それぞれがさらに制限型とむちゃ食い/排出型,排出型と非排出型に分けられます。
神経性食欲不振症は,主に10代女子,20代女性に発症する,強烈な痩せ願望や肥満恐怖に基づく意図的なダイエットのために,極度の痩せ(期待される体重の85%以下)をきたす病態です。その有病率は,欧米諸国では若い女性の0.5%,日本では0.1%程度と推定されています。
一方,神経性過食症は,10代後半から20代の女性に多く,むちゃ食いのエピソードの繰り返しによって特徴づけられる病態です。また,体重の増加を防ぐために,自己嘔吐,下剤・利尿剤・浣腸の乱用,絶食,過剰な運動などの代償行動を繰り返します。頻度は欧米諸国で若い女性の1.5%程度と神経性食欲不振症よりもはるかに多く,さらに,近年かなりの増加傾向にあります。そして,どちらの病態も,自己評価が体型および体重の影響を過剰に受けている点が共通した特徴です。
なお,神経性食欲不振症の制限型とは,絶食のみが認められるものを指し,神経性過食症の非排出型とは,代償行動のうち,嘔吐,下剤・利尿剤の乱用などを伴わないものを指します。したがって,神経性食欲不振症のむちゃ食い/排出型と神経性過食症の排出型の病像はかなり似ることになりますが,体重低下の有無と,当初より過食症状があるかどうかで区別されます。ただし,神経性食欲不振症では通常,発症後しばらくの間は過食症状がありませんので注意が必要です。
ここで重要なのは,自発的に食行動異常をきたすというところです。他の器質的疾患や精神疾患による痩せや食行動異常は含まれないことに留意が必要ですので,そこは専門家とのご相談なさるのが賢明です。
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