テレビに出てくる美しいプロポーションの女優さんたち。
彼女たちは、一日で、そのプロポーションを手に入れたわけではありません。私たちに
見えないところで、日々自分自身を見つめ、プロポーションを維持するための努力をして
いると思います。皆さんもここで一度、自分自身のことを見つめてみてください。
「体重を増やしている原因は何だろう?」と。
この本を手に取っている方なら、「そんなこと言われなくても、食べ過ぎが原因に決
まっている」とすぐに思い当たるかもしれません。
そうです。肥満の主な原因は「食べ過ぎ」です。
実際、私どものところへ肥満の相談に見える方で、太りやすい女性に共通しているのは、
皆さん「食べることが大好き」という点です。食べるのが嫌いで太ってしまう人はあまり
見たことがありません。
簡単にいえば、食べることが大好きで、エネルギーを使う以上に食べ過ぎてしまうから
太ってしまうのです。では、なぜ、食べ過ぎてしまうのでしょうか。
そのメカニズムを考えてみましょう。
少し専門的な言葉も出てきますが、できるだけ分かりやすく解説していきたいと思います。
まず、食欲がどこから生まれるかを説明します。
食欲を左右する中枢、つまり、食欲に関係する大事な部分は、脳にあります。肥満も脳に
支配されていることになります。食欲中枢は、脳の中の「大脳」にあります。大脳は、
脳の一番外側に位置し、脳全体の8割を占めています。その大脳のさらに一番外側が
「大脳新皮質」、その下に包み込まれるようにあるのが、「大脳辺縁系」です。
大脳新皮質と大脳辺縁系はそれぞれ次のような働きがあります。
【大脳新皮質と大脳辺縁系の働き】
・大脳新皮質……人間の進化にともなって発達した脳。高度な知的活動をつかさどる。
意識や理性を左右している。人間に特有。
・大脳辺縁系(旧皮質)……動物的な本能をつかさどっている。食欲、性欲、睡眠欲のような
本能的な欲望、怒り、快楽などの情動に関与。動物にも共通にある。
新皮質と旧皮質の性質はまったく反対です。
新皮質(意識や理性)は聞き分けがよく、100%満たされなくても満足することがで
きます。全体の30~40%、人によっては10%で満足することもあります。つまり、たとえ、
満足していなくても、満足したと思い込める脳なのです。
一方、旧皮質(本能)は、そうはいきません。100%満たされなければ、満足しない
のです。
例えば、食事を腹六分目ほど食べたとします。意識・理性のほうでは、
「もうお腹いっぱいでしょう」と言い聞かせると、満足します。
ところが、本能は腹六分目では決して満足しません。基本的に、100%でなければ満
足せず、「お腹がすいた。お腹がすいた」と騒ぎます。
手の付けられないわがままさがあります。
この本能を満足させる物質が脳の中にはあります。「セロトニン」や「ノルアドレナリン」
といった神経伝達物質です。
セロトニンは、大脳に働きかけて覚醒の状態を調整したり、心の領域に働きかけて、意
欲や心のバランスに関与する、自律神経の働きに関係して血圧や代謝を上げる、などの
働きがあるといわれます。
ノルアドレナリンは、ストレスに適切に対応する働きなどがあります。
これらは、別の名を「食欲調整ホルモン」といわれています。
これらが十分に脳の中で分泌されていれば、本能は100%でなくても大人しくしています。
理性と本能が拮抗状態を保ち、脳の状態も安定します。
逆に、分泌が十分でなければ、これらに代わるものを摂取しようとします。それが食を
求めるという形になって表れるのです。
また、人はおいしものを食べるのが好きです。
人間の三大欲求には、睡眠欲、性欲、食欲があります。食べる行為は、一番手軽に、本
能を満たしてくれます。食べるという行為は、楽しみであると同時に快楽です。つまり、
「食べる=手っ取り早く快楽を満たす行為」なのです。
だから、セロトニンやノルアドレナリンが十分に分泌されずに不足すると、まず、食べる
行為に飛びついてしまう。そして、過食が始まってしまうのです。
※この記事は、メディケアダイエット代表岡田眞の著書「太らない体質は食事がつくる」
(2014年)をWebにて転載したものです。
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